活性酸素がもたらす老化とはどんな現象なのかを考えてみたいと思う。人は他人を見てだいたいの年齢を想像する。まず、顔や手の肌の状態、特に皺やシミで判断しているのではないだろうか。では、なぜ皺が加齢と共に出てくるのか。
昔テレビで「25才はお肌の曲がり角」という化粧品のコマーシャルがあった。太陽から来る紫外線で25才を過ぎると皮膚が酸化して皺が増加したり、シミができ易くなるという事を言っているわけだが、その理由は生まれてすぐの赤ちゃんや子どもの時は皮膚の角質細胞が個々に独立し、自由に動く事ができ軟らかい状態を保つことが出来るのだが、酸素によりその個々の角質細胞が結合して徐々に大きな角質細胞になると、その自由度は失われ軟らかさも消え、硬く厚い皮膚へと変化する。
この結果どのような事が起こるか別の例で話をする。分かり易く紙で例えた場合、非常に薄い紙は、折り曲げた後に再び広げても、殆ど折癖もつかず元通りになるが、厚い紙は一度折り曲げると、広げても折癖がはっきり残る。これが人間の皮膚でいう皺である。つまり、紫外線などの影響で皮膚の組織細胞が、酸素による架橋反応で隣同士の細胞が結合し、小さな自由度の高い柔らかい皮膚から、大きな硬い自由度が低い皮膚に変化し、その結果、皮膚の折癖の皺が、増加するということになる。この酸化による影響は、単に皺が増加するだけではない。軟らかく薄い皮膚の時は、体内の老廃物を汗と共に体外に排出する機能が高かったが、皮膚が硬く厚くなると、この老廃物を体外に排出する機能が低下し、残った老廃物が、結果的にシミを形成するという事になる。この皮膚の酸化による影響の結果が、顔、首、手などの皮膚の皺や、体全体の皮膚のシミを生み、それを人は老化と呼ぶ。この皮膚の状態を見て、人は他人の年齢を想像することになる。
この肌の酸化による老化を防ぐために、人類は今までいくつかの対策をとって来た。その最大の、そして最も高い効果が、期待されてきたこれまでの古典的方法が、水分を利用する方法であった。赤ちゃんが生まれ、その軟らかく、しなやかで弾力性のある肌は、全ての赤ちゃんが持つ特性で、人々はその肌の美しさに魅力を常に感じてきた。赤ちゃんや10代の若者は、太陽の下で日光浴をして紫外線に当っても、大人の様に肌に皺やシミが多発する事はない。どうしてなのか?この事を分かり易く他の事で説明する。
酸化の最も典型的な現象は「火が燃える」という事になる。山で木を燃やす場合、水分が豊富な若い木は燃えにくいのだが、枯れた老木はあっという間に燃えてしまう。この違いは木が持っている水分含有率の差である。水分が多い木は燃えにくく、水分が少ない木は燃え易い、つまり酸化されやすいという事になる。火事が起きて消防自動車がその「燃える」という酸化反応を止める為に使用するのが水だ。つまり、酸化を抑制する最も効果的な物質は「水」という事になる。これで赤ちゃんや10代の若者が、太陽の光の下で酸化しにくいという事が、理解できたのではないだろうか?
赤ちゃんの肌の水分含有率は70%以上、10代の若者の肌の水分含有率は60%以上有り、酸化されにくい状態を保っている。これに対し、25才を超えた大人の肌の水分含有率は60%以下であり、高齢者になるとそれは50%以下、場合によっては40%以下となり容易に酸化反応が起きる事となる。その為に、化粧品メーカーが製造販売している化粧品の大半が肌に水分を補給・保湿させる製品となっている。その製品は肌への浸透性を高める為にクラスターを小さくした水溶液のものから、一度肌が吸収した水分を逃がしにくくし、保湿性を持続し、肌の乾燥を防ぐものまで千差万別だが、コンセプトは非常に単純明快で、肌の水分含有量を増加させ、その酸化を防ぐと共に、水分含有量が増加した肌はより美しくより若く見える為、その状態を創ろうというものだ。
ここで一つ気を付けなければいけない事は、皮膚の組織細胞に水分を与え、そしてその乾燥を防ぐ化粧品は良いのだが、一見して肌に潤いを与えている様に見えても、化粧品の素材そのものが水分を保持し皮膚の組織細胞に水分を与えないものが有り、その場合、化粧品を塗っている状態と、それを洗顔して落とした時の皮膚の状態の差が大きく、そのギャップが大変大きくなる化粧品は、使い続けると、より肌の水分含有量は低下し、化粧を落とした時の老化度は、より増す結果となる。
日本で温泉が女性に人気があるのも、この水分含有量に関係がある。温泉の湯は、水道水より肌への浸透性が良いものが多く、風呂上りに鏡で自分の顔を見ると、今まで以上に自分が美しくなったと、感じる人は少なくない。これは、温泉の水が自宅の風呂より、多くの水分を肌に与える為、肌の水分含有量が増加し、その分肌が美しく、若返った状態を示すからだ。しかし、時間が経つにつれ元に戻ってしまうのだが、少し美しくなった記憶が頭に残り続ける為、女性は再び温泉へ行く欲望に、駆られるのではと思われる。
昔、日本で販売されたもので「美顔器」というものがある。単純に水蒸気を発生させ、顔に当てるものだが、これも皮膚の水分含有量を増加させ、皮膚を若く見せる目的のものだが、その後に如何にしてそれを乾燥させないかが重要となる。
マレーシアの高名な元首相のマハテール氏が「自分が若く見えるのは、マレーシアという国が、湿度が高く肌の老化を遅くしているからだ」と言ったのも、この同じ視点からであった。
しかし、湿度が高い国の人は、全員老化が遅く長生きで、乾燥している国の人は、老化が早く短命かというと、必ずしもそうではない。これはあくまでも外観上の皮膚の状態だけに限った話であり、また毎日水を多量に飲めば、酸化は遅くなり長生きできるかというとそうでもない。あくまでも水分が不足すると問題が発生するが、水分を十分足りている状態にすれば、それ以上水分を摂取しても何も変化はない。
人間の体は自然にコントロールされ、必要以上の水分は吸収されない。外部より水分を供給し、皮膚を含め体内の酸化を抑制する事には限度があり、老化を防ぐという現象まで辿りつくことは、過去出来なかったのだ。つまり、古典的方法では成し得なかったのである。血管内の酸化を防ぐ、活性酸素の働きを抑制できる方法は唯一、血管内に活性酸素を抑制する水和電子を発生させる方法しかないと私は信じている。一部の人は水素を添加した水を飲めば活性酸素を抑制できると思っているが、一般の水素は普通の酸素と同様、活性力が無いので、還元力の強い水和電子を放出することはできない。つまり活性酸素の働きを抑制できるのは、還元力の強い電子、水の自由電子である水和電子を血管内で発生させる方法しかないのだと私は強く信じている。